日本の滅び方

人口、通貨、住宅の限界点はどこか

文献メモ:少子化対策は20歳代向けが重要(2017年2月 みずほ総合研究所)

少子化対策は20歳代向けが重要(2017年2月 みずほ総合研究所

https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/mhri/research/pdf/insight/pl170214.pdf

#要旨

・一般にメディアで広く報道される「出生率」は毎年の「期間合計特殊出生率」を指しており、これは「その1年の15~49歳女性の年齢別出生率の合計」である。

・一方、「コーホート合計特殊出生率」は、「各世代の女性の15~49歳の年齢別出生率の合計」を指す。

・「期間合計特殊出生率」の変動は、一時的な出生力の変動要因=テンポ(tempo)要因の影響を受けやすく、解釈には注意が必要である。

・「コーホート合計特殊出生率」は、長期的な出生力の変動要因=カンタム(quantum)要因を分析するのに適しているが、毎年判明するのが新たに50歳に達した1世代のみであって、最新の出生動向を推定する情報にはならないため、メディアではあまり取り上げられない。

・「コーホート合計特殊出生率」は1954年生れまで概ね2前後で推移していたが、その後、長期的な低下トレンドに入り、1964年生れの女性では1.66である。

・1965年生れ以降の女性の「コーホート合計特殊出生率」は(本レポート執筆時点では)未判明だが、現在までの累積出生率を合計することで、その後の動向をある程度推定できる。

・1966年の丙午による急変動を除くと、1973年生れまでは低下傾向が続き、1974年生れ以降は、わずかながら上昇に転じている。上昇の理由は、1974年生れ以降では30代での出生数が増える傾向があるからである。

・「期間合計特殊出生率」は、2005年(1.26)を底に2015年(1.46)まで緩やかに回復したが、この背景には、30歳代女性における出生率上昇がある。

・とはいえ、上昇の兆しが認められるのは1974~1979年生れまでであり、1980年生れ以降の判明分のデータをみると、前の世代を下回る兆しがある。

・諸外国と比較した日本の低出生の原因は、むしろ20歳代女性の出生率の低さにあり、政策的なアプローチはこの世代に焦点を当てるべきである。

・女子の大学進学率が上昇し、四年制大学を卒業後、就職をするというライフコースが一般化したため、全体として晩婚化の傾向が定着した。このライフコースだと20歳代での出産機会を増やすことは困難である。

・20歳代女性の出生率を引き上げるには、高校卒業後に出産・育児を経て、それから本格的なキャリアを始めるなど、ライフコースの選択肢を多様化させるための議論が必要である。

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#メモ

日本では、1970年代半ばから長年低下し続けてきた期間出生率が2005年にいったん底打ちし、2006年~2015年にかけて期間出生率の緩やかな回復が見られた(2005年:1.26→1.46)。しかしその後、回復は頭打ちとなり、2020年には1.34まで再低下している。

この背景は何か。女性の初婚年齢は、1990年代~2000年代に大きく上昇した(1990年には26歳であったのが、2010年には29歳に)。1990年代~2000年代は、女子の四年制大学進学率が大きく上昇した時期でもあり、女性の高学歴化がそのまま晩婚化につながった格好となっている。

この時期の初婚年齢の上昇により、出産機会の多くが20歳代から30歳代に後ろ倒しになった。これが2006年~2015年の期間出生率回復を演出した。これはあくまで一時的な上昇要因(テンポ効果)だったので、2016年以降は出生率回復が止まり、現在に至っている。